職業放浪記

新橋駅ガード下のタンメン

会社の電話が激しく鳴った。課長さんが取ると「はい。わかりました。納期は3日後ですね。」そんな会話をしている。切ってからおもむろに「千葉のコンビナートに建設するフレアスタック(集合煙突)の構造計算が入った。通常だと1週間かかる仕事だが、3日で...
職業放浪記

117クーペの先輩

築地の造船会社のコンピュータ部門に勤めていた時分であるが、直属の先輩で117クーペに乗っていた人がいた。今となっては幻の名車であるが、当時はトラックバスメーカーであるいすゞ自動車も乗用車をたくさん製作していたのである。先輩はコンピュータプロ...
旅行雑記

ぼったくりラーメン

上野でサラリーマンをしていた頃だろうか。あまり記憶が定かではないが、都内でもいわゆる一流のサラリーマンが集うような町ではなかった。道にはゴミが広がり、怪しげな風俗店が軒を連ね、昼間から一杯引っかけた正体不明の男が回りの人々に怒鳴り声を浴びせ...
旅行雑記

1時間ラーメン

注文してからラーメンが出てくるまでの平均時間はどのくらいであろうか。計測した事はないが、およそ15分程度か。まだ学生の時分、昼休みに、たまには学生食堂には無い何かが食したくなり、見知らぬ町にぶらぶらと出かけた。しばらく歩くと大きな橋があり、...
職業放浪記

空気ハンマーと赤い鉄塊

東京の下町にある塩ビ工場で働いていた事がある。荒川土手下のじめじめしたボロアパートから勤務先の工場まで徒歩で通勤していた。その途中に鍛造工場があった。通常、工場なら屋根のある屋内で作業する。しかし、そこはなぜか道に面した高さ1メートルほどの...
職業放浪記

一日も休まない超人

足立区のボロアパートにひとり暮らしをしていた時分なのでかなり前の話である。私の部屋の斜め前に住んでいたとび職のAさんとひょんなことから知り合いになり、その後度々彼の部屋で食事をする仲となった。その彼が勤めている会社の先輩に超人がいるという。...
職業放浪記

カット場の赤シャツ

クロス(壁紙)や床のクッションフロアを作る工場で働いていた事がある。分野としたら住宅資材なのだが、実際は印刷物であった。巨大な輪転機が工場内に鎮座し、壁紙であれば紙をセットして印刷ロールを回し、次々と印刷してロールへ巻き取っていく。印刷に使...
職業放浪記

連続加熱炉

壁紙やクッションフロアを製造する会社に居た時分だが、所属は本社経理部なのに時々現場の工場回りをさせられた。いくら本社勤務の事務屋でも製造現場を知らないで仕事をすることは木を見て森を見ない欠陥人間を生み出すと考えた経営者の達見であろう。ある日...
職業放浪記

QCサークル

塩ビ工場でしばらく働いていたことがある。東京の下町にある誠に小さな工場で、主な生産品は台所の床に貼るクッションフロアやクロス(壁紙)などである。もっとも私は工員ではなく、一応経理部で生産管理業務をNECのオフコンで処理していた。当時のOSは...
職業放浪記

工場のスチーム風呂

若い頃、しけた感じの風呂無し月1万5千円のボロアパートに住み着き、歩いて5分の工場まで通っていたことがある。汚い作業服を纏い、安全靴という先の方に鉄板が入った靴を履いてブラブラ歩く様子はまさに落ちぶれた工員か浮浪者であった。朝は適当に青カビ...