職業放浪記

一日も休まない超人

足立区のボロアパートにひとり暮らしをしていた時分なのでかなり前の話である。私の部屋の斜め前に住んでいたとび職のAさんとひょんなことから知り合いになり、その後度々彼の部屋で食事をする仲となった。その彼が勤めている会社の先輩に超人がいるという。...
職業放浪記

カット場の赤シャツ

クロス(壁紙)や床のクッションフロアを作る工場で働いていた事がある。分野としたら住宅資材なのだが、実際は印刷物であった。巨大な輪転機が工場内に鎮座し、壁紙であれば紙をセットして印刷ロールを回し、次々と印刷してロールへ巻き取っていく。印刷に使...
職業放浪記

連続加熱炉

壁紙やクッションフロアを製造する会社に居た時分だが、所属は本社経理部なのに時々現場の工場回りをさせられた。いくら本社勤務の事務屋でも製造現場を知らないで仕事をすることは木を見て森を見ない欠陥人間を生み出すと考えた経営者の達見であろう。ある日...
職業放浪記

QCサークル

塩ビ工場でしばらく働いていたことがある。東京の下町にある誠に小さな工場で、主な生産品は台所の床に貼るクッションフロアやクロス(壁紙)などである。もっとも私は工員ではなく、一応経理部で生産管理業務をNECのオフコンで処理していた。当時のOSは...
職業放浪記

工場のスチーム風呂

若い頃、しけた感じの風呂無し月1万5千円のボロアパートに住み着き、歩いて5分の工場まで通っていたことがある。汚い作業服を纏い、安全靴という先の方に鉄板が入った靴を履いてブラブラ歩く様子はまさに落ちぶれた工員か浮浪者であった。朝は適当に青カビ...
職業放浪記

プラスチック工場の2階

壁紙や床材を作る塩ビ工場で働いていたことがある。当時は現場ではなく経理部だったのでどちらかというと工員を管理する立場だった。当時は若いゆえに何となく現場の職工たちを下に見るような気配を纏っており、自分でも嫌な奴だと薄々感じていた。 当時はN...
旅行雑記

東尋坊と自殺

福井県に東尋坊(トウジンボウ)という海にそそり立つ断崖絶壁がある。自殺の名所としても全国に良く(悪い意味で)名が知られた場所である。ある日、急にそこに行きたくなった。なぜなのか理由はわからない。これは後で判明する。 すぐに北陸新幹線の切符を...
旅行雑記

沖縄の身延山

乗り鉄仲間のAから旅の誘いがあった。旅のプランはこうだ。まず中央線で甲府まで行き、そこから身延線で南に下る。富士駅からは東海道線に乗り換え、東京駅に戻るという逆コの字型の一筆書きプランであった。面白そうなのでこの計画に乗ることにした。(鉄道...
行政書士事件簿

医学研究室2

JR市ヶ谷駅を降りると靖国通りを少し歩き、大きなビルの前に出る。なかなか警備が厳重そうなビルのようで、ガードマンが入る人を全て厳重にチェックしている。どうも、身分証が無いと入館できないようだ。私はドキドキしながらガードマンに医学部教授名を告...
行政書士事件簿

キューポラのある町

私の会社にかつて頻繁に出入りしていたヤクザ風流れ者系不動産ブローカーのAさんから「こんど会社を設立したい。手伝ってくれ。」との依頼が入る。何の会社なのか、何に使うのか尋ねるが全く答えてくれない。何かの物件の受け皿に使用するようだ。もしかして...