職業放浪記

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無能の人1

脳神経科学の本によると有能な人間と無能な人間には1億倍以上の能力差があるという。そして悲しい事に無能な人は自分の無能さに決して気づくことはなく、逆に有能な人は自分の至らなさを嘆きながら勉強や仕事のスキルアップに励むため両者の差はますます広が...
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女形の掃除屋さん

都内のビル管理会社で仕事をしていた事がある。主にオフィスビルが職場で、ボイラや電気保守点検以外に床やトイレの掃除もしていた。電気工事士と言っても電気点検だけやっていれば良いような優雅な会社ではなかった。最もこの業界は初めてなので経験すること...
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香料会社の運転手

世の中に香料を専門に作る会社があることを初めて知ったのは、某ビル管理会社で電気管理の仕事をしていた時分である。入社してしばらくは中小ビルのボイラ室に居たが、慣れてくると課長さんから「今度○○香料ビルに常駐してよ。」と言われた。このビルはかな...
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味方に撃たれた兵隊さん

ボイラー2級免許を取得してからしばしば新聞の求人欄を見るようになった。2センチ四方程度のまことに小さい求人欄で、電気工事士なら「電工」と書かれ、「委細面談、電話○○」等まるで電報の電文のようにそぎ落とした文章が並んでいる。ちなみにボイラーマ...
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課長さんの数学

造船会社でサラリーマンをしていた時期があった。もっとも当時は造船不況で造る船がなく、仕方なしに橋梁や高圧鉄塔の設計、海底トンネルを掘るモグラの先端切歯の設計等していた。学生時代によく数学の先生から「今はこんな方程式とか勉強しているが、将来仕...
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新橋駅ガード下のタンメン

会社の電話が激しく鳴った。課長さんが取ると「はい。わかりました。納期は3日後ですね。」そんな会話をしている。切ってからおもむろに「千葉のコンビナートに建設するフレアスタック(集合煙突)の構造計算が入った。通常だと1週間かかる仕事だが、3日で...
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117クーペの先輩

築地の造船会社のコンピュータ部門に勤めていた時分であるが、直属の先輩で117クーペに乗っていた人がいた。今となっては幻の名車であるが、当時はトラックバスメーカーであるいすゞ自動車も乗用車をたくさん製作していたのである。先輩はコンピュータプロ...
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空気ハンマーと赤い鉄塊

東京の下町にある塩ビ工場で働いていた事がある。荒川土手下のじめじめしたボロアパートから勤務先の工場まで徒歩で通勤していた。その途中に鍛造工場があった。通常、工場なら屋根のある屋内で作業する。しかし、そこはなぜか道に面した高さ1メートルほどの...
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一日も休まない超人

足立区のボロアパートにひとり暮らしをしていた時分なのでかなり前の話である。私の部屋の斜め前に住んでいたとび職のAさんとひょんなことから知り合いになり、その後度々彼の部屋で食事をする仲となった。その彼が勤めている会社の先輩に超人がいるという。...
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カット場の赤シャツ

クロス(壁紙)や床のクッションフロアを作る工場で働いていた事がある。分野としたら住宅資材なのだが、実際は印刷物であった。巨大な輪転機が工場内に鎮座し、壁紙であれば紙をセットして印刷ロールを回し、次々と印刷してロールへ巻き取っていく。印刷に使...